神奈川・宿泊所11人死亡火災 川崎市消防局「ガソリンをまいて放火した可能性が高い」 2017年5月16日

  • 7 年前
宿泊所火災2年 違法営業今も
2017年05月16日 17時42分
川崎市で簡易宿泊所が全焼し11人が死亡した火災から17日で2年になります。
川崎市は対策会議を開き、防火対策が不十分だと指摘されたうち6分の1の宿泊所が法律違反の状態で営業を続けていることが報告されました。
おととし5月、川崎市川崎区の簡易宿泊所「吉田屋」と隣接する簡易宿泊所のあわせて2棟が全焼して11人が死亡しました。
火元の吉田屋は建築基準法に違反して吹き抜けのある木造3階建てに改築され被害を拡大させたと指摘されたことから、川崎市は違法な構造の24棟の宿泊所に3階部分の使用停止など改善を求めてきました。
川崎市は17日で火災から2年になるのを前に対策会議を開き、6分の1にあたる4つの宿泊所が法律違反の状態で営業を続けていることが報告されました。
使用停止となっている3階には少なくとも20人以上が生活しているということです。
宿泊所は、対策費用を工面できないことや、3階部分を使わないと経営を維持できないなどと説明しているということで、市は改善を求めていくことにしています。
また長期滞在していた利用者1349人に対しアパートなどへの転居を支援した結果、およそ半数の672人に減ったことも報告されました。
川崎市の福田紀彦市長は定例の記者会見で、4棟の簡易宿泊所が法律に違反した状態で営業を続けていることについて「それぞれの宿泊所で事情があると思うが是正に至っていないのは非常に遺憾だ。
より強い法的な措置を行う段階に入ってきているので今後対策を検討していきたい」と述べました。
また宿泊所の利用者の高齢化が進んでいることについて「強制的に転居させるのは難しいが、宿泊所は『ついの住みか』ではないと説明し、利用者の意思を聞きながら一人一人に
寄り添う形でサポートしていくしかない」と述べました。
火災を巡っては川崎市消防局が何者かがガソリンをまいて放火した可能性が高いとする調査報告書をまとめ、警察も放火と失火の両面から原因を調べています。
http://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/1053080231.html

宿泊所 残る人も転居する人も
2017年05月16日 17時56分
【転居できず残る人】
川崎市は簡易宿泊所を利用する人たちの自立を促そうとアパートなどへ転居する支援を強化してきましたが、高齢のため転居できずに宿泊所を利用し続ける人も多く残っています。
30年以上宿泊所を利用している石岡正春さん(91)は青森県から上京し首都圏の役場で勤務したこともありますが、職を失い宿泊所暮らしが始まりました。
足腰が悪い上、心臓に持病もあり、常に高齢者用の紙おむつを着けなければならないと言います。
生活保護を受給しながら宿泊所から週2回ほどデイサービスに通っています。
火災のあと市からの要請もあってアパートを探しましたが高齢を理由に大家から断られ、管理人の助けを借りながら宿泊所での生活を続けています。
川崎市によりますと、石岡さんのように生活保護を受給しながら宿泊所を利用し続けている人のうち4分の3ほどが65歳以上の高齢者だということです。
石岡さんは「管理人はよく面倒をみてくれて助かっています。ここ以外に行き場がなく困っていますが、もう諦めて死ぬのを待っているような状況です」と話していました。

【転居者の孤独】
川崎市からの要請で宿泊所からアパートなどに移り新しい生活を始めた利用者の中には地域になじめず孤独感を感じている人もいます。
火元の吉田屋に15年間住んでいた古澤満南生さん(74)は18歳で上京し東京の百貨店に勤務しましたが賭け事で借金を抱えて仕事を辞め、宿泊所暮らしを始めました。
火災当日は外出していたため無事でしたが、友人5人を亡くしました。
古澤さんは「あっという間の2年ですが火災のことは絶対に忘れられません。11人の命がたった数時間で燃え尽くされたことを思うと悔しい気持ちでいっぱいです」と話していました。
火災のあと川崎市の支援を受けておよそ2キロ離れたアパートに引っ越しました。
アパートでの生活は落ちついてきましたが、仲間がいる宿泊所とは違って一人きりの時間が多くなり孤独を感じるようになってきたといいます。
古澤さんは孤独を紛らわすために週2回のペースで図書館に通っていると言います。
古澤さんは「一人ぼっちで孤独を感じるようになりましたが精いっぱい毎日を生きることしかありません」と話していました。
【簡易宿泊所街に変化も】。
簡易宿泊所が集まる川崎市川崎区では、3階部分が使えなくなったことによる経営の悪化などにより火災の後の2年間で13棟の宿泊所が廃業しました。
川崎市川崎区の日進町地区を中心とする簡易宿泊所は高度経済成長時代は労働者が滞在する場として、その後は生活保護受給者などが生活する受け皿となっていました。
しかし11人が死亡した火災を受けて、川崎市が違法状態だった3階部分の使用を中止するよう求めたことなどから経営が悪化する宿泊所が増え、この2年で13棟が廃業したということです。
川崎区日進町では今年、廃業した簡易宿泊所を市内の不動産会社が買い取り、外国人観光客などの受け入れを目指して改築するリノベーションの動きも始まって、簡易宿泊所が集まる町は曲がり角を迎えています。
http://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/1053080232.html

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