20140112桜島大噴火の場合火山灰影響は全国に

  • 11 年前
鹿児島県の桜島で大正時代に起きた大噴火から12日で100年となります。
桜島で当時と同じ規模の噴火が起きた場合、風向きによっては火山灰が北海道まで達してほぼ全国で航空機が運航できなくなるなど、広い範囲で大きな影響が出るおそれがあることが専門家の分析で分かりました。

100年前、大正3年1月12日に起きた桜島の大噴火では、噴火に伴う地震などで58人が犠牲になったほか、流れ出た溶岩で桜島と大隅半島は陸続きになりました。
気象庁気象研究所の新堀敏基主任研究官は、100年前と同じ規模の噴火が再び起きた場合に、火山灰がどのように広がるかを調べるため実際の気象条件を基にシミュレーションしました。
このうち、全国に影響を及ぼすのは南西の風が吹いた去年10月の気象条件の場合で、火山灰は高さ1万8000メートルに達したあと、上空の風に流されて近畿や東海、関東を超えて北海道にまで達するという結果になりました。
また、火山灰が漂う高度は地上付近から1万数千メートルまでの間と推定され、航空機が運航する高度と重なっています。
専門家によりますと、航空機のエンジンは火山灰が入ると止まるおそれがあるほか、降り積もる火山灰で羽田や成田、中部・関西といった主要な空港も閉鎖されるおそれがあり、日本の空の便はまひするおそれがあるということです。
さらに降り積もる火山灰の量は、▽大阪市で1.3ミリ▽名古屋市で0.5ミリ▽東京の都心で0.3ミリに達し、車の運転や鉄道の運行に支障が出るおそれがあるということです。
新堀主任研究官は「風向きによっては日本全体に影響が及ぶ。こうしたことが十分に起こりうるという認識を持ち、対策を考えておくことが重要だ」と話しています。
航空機欠航が数日から1週間続くおそれ

桜島で大規模な噴火が起きると風向きによって火山灰は全国に広がり、専門家は航空機の欠航が数日から1週間程度続くおそれがあるとして、国や航空会社などが連携して影響を最小限にするための対策を考えておく必要があると指摘しています。
火山灰が航空機に与える影響に詳しい、桜美林大学の小野寺三朗教授によりますと、航空機のジェットエンジンが火山灰を吸い込むと、灰の中のガラス成分が高温で溶けて内部にこびりつき空気の流れが悪くなって最悪の場合、エンジンが停止するほか、操縦室の窓が傷ついて外が見えにくくなるなどの影響も出るということです。
過去のトラブルとしては1982年にブリティッシュエアウェイズのジャンボ機がインドネシアの上空で火山灰を吸い込み、4つあるエンジンすべてが停止したほか1989年にはKLMオランダ航空のジャンボ機がアラスカ上空で火山灰を吸い込み同じようにすべてのエンジンが停止したことがあります。
いずれのケースも高度が低下したあとにエンジンが再始動し、かろうじて緊急着陸しました。
このため2010年に北欧のアイスランドで火山が大規模に噴火した際にはヨーロッパ各国の空港がおよそ1週間閉鎖され10万を超える便が欠航し、およそ1000万人の乗客が足止めとなりました。
小野寺教授によりますと、桜島で大規模な噴火が起きた場合も風向きによって羽田や成田、中部・関西といった主要な空港も閉鎖され、空の便はまひするおそれがあるということです。
さらに、空港の滑走路などに積もった灰を取り除くのに時間がかかり、復旧に数日から1週間程度かかるおそれがあると指摘しています。
国土交通省によりますと空港の火山灰の除去方法を定めたマニュアルなどは無く、具体的な検討も行われていないということです。
小野寺教授は「火山災害は頻繁に起きるものでないため、現実の問題として捉えられていない面がある。ヨーロッパで起きたようにいったん発生すると影響が大きいので、国や航空会社などは火山灰を取り除く方法や捨て場所などをあらかじめ考えて影響を最小限にするための対策を進めていくことが必要だ」と指摘しています。
火山灰の量と想定される被害は

火山灰は積もる量が0.1ミリから1ミリ程度で交通網に影響が出始め、数十センチになると木造家屋の倒壊など深刻な影響が出るとみられています。
気象庁などによりますと、火山灰が積もる量が0.1ミリから1ミリの場合、道路の白線が見えにくくなり車は徐行運転が必要になるほか、鉄道は信号システムなどにトラブルが出て運行できなくなる可能性があるということです。
また、ぜんそくの患者などは症状が悪化するおそれがあるということです。
さらに、1ミリ以上積もるような場合には、降ってくる灰や巻き上げられる灰で視界がかなり悪くなるため車の運転を控える必要があるとしているほか、健康な人でも目や鼻、呼吸器などに異常を訴える人が出始めるということです。
また、湿った火山灰が送電設備に付着するとショートして停電が起きたり、浄水場では水が浄化できなくなるなどライフラインにも影響が出るとしています。
さらに、多くの火山灰が積もった際には直接、命が危険にさらされます。
富士山が噴火した場合の被害想定では、雨で湿った灰が30センチ積もると木造住宅は重みに耐えられず倒壊する住宅が出始め、45センチ以上になると全体の60%が倒壊するとしています。

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