20140825バス運転手意識失う事故 4年間で22人死亡

  • 10 年前
走行中のバスで運転手が意識を失う事故が相次いでいることを受けて、NHKが、バス会社から国に提出された事故報告書を分析した結果、運転手の体調急変に伴う事故などの件数は、この4年間で少なくとも210件に上り、運転手や乗客など22人が死亡、174人がけがをしていたことが分かりました。

ことし3月、富山県の北陸自動車道でバスが大型トラックに衝突して乗客と運転手の2人が死亡、26人が重軽傷を負った事故など、去年から走行中のバスで運転手が意識を失ったことに伴う事故が相次いでいます。
これを受けてNHKが、バス会社から国に対してことし3月までのおよそ4年間に提出された「自動車事故報告書」を情報公開請求で入手して分析しました。
その結果、運転手の体調急変に伴って事故を起こしたり、運行を中止したりした件数は少なくとも210件に上り、バスの運転手や乗客、それにバスと衝突した車両に乗っていた人など合わせて22人が死亡し、174人がけがをしていたことが分かりました。
また、運転手の体調不良の原因を医師などの専門家と分析した結果、最も多かったのは、脳出血や心筋梗塞など血管に関係する病気で52件、ウイルス性の胃腸炎などの感染症と、めまいが、それぞれ30件となっています。
これについて、運輸業界の健康管理に詳しい労働科学研究所の酒井一博所長は、事故の背景には、ほかの産業と比べて急速に進む運転手の高齢化があると指摘したうえで、「これからさらに高齢化が進むとみられ、多くの乗客の命を預かるバスの運転手の健康管理はより一層徹底していく必要がある」と話しています。
意識失う事故で多数の死傷者

このうち、平成23年、愛知県で小学校の貸切バスが道路脇の崖に転落し、運転手が死亡、乗っていた児童など39人がけがをした事故では、当時52歳の運転手がくも膜下出血を起こして意識を失っていました。
また、去年7月、宮城県の東北自動車道でバスが中央分離帯などに衝突し、当時37歳の運転手が死亡、乗客など2人がけがをした事故では、運転手が虚血性心疾患を起こして意識を失っていました。また、おととし3月、宮崎市で路線バスが、対向車線を走っていた軽乗用車と衝突し、当時61歳の運転手が死亡、衝突した車などに乗っていた4人がけがをした事故では、運転手が心臓の異常を起こして意識を失っていました。
運転手のいびつな年齢構造

バスの運転手は高齢化が進む一方、若い世代が極端に少なく、いびつな年齢構造となっています。
日本バス協会が加盟するバス会社のうち、およそ120社を対象に行った調査によりますと、60代以上が12.6%、50代が26.2%、40代が36.7%で、40代以上がおよそ75%を占める一方、20代が3%と極端に少なくなっています。
また、厚生労働省の調査によりますと、去年のすべての産業の平均年齢は42.8歳で、10年前と比べて1.5歳高くなっています。これに対し、去年のバスの運転手の平均年齢は48.3歳と、10年前を3.6歳上回り、急速に高齢化が進んでいて、すべての産業の平均と比べて5.5歳高くなっています。
背景としては、▽ほかの産業と比べて労働条件が厳しい▽若者の車離れなどを背景にバス運転手に必要な大型2種免許を取得する人が減っている▽採用しても定着率が悪いといった課題が指摘されています。
一方、高齢化などに伴い運転手の健康管理も課題となっていて、去年、バスなどの旅客用の自動車の業界で定期健康診断で何らかの異常が見つかった人の割合は71.8%で、10年間で6.7ポイント上昇し、すべての産業の平均と比べて18.8ポイント高くなっています。
専門家「より一層の健康管理を」

運輸業界の健康管理に詳しい労働科学研究所の酒井一博所長は「年齢を重ねていけば、いろいろな病気が出始める。これからさらに高齢化していくので多くの人を乗せるバスの運転手には、より一層、健康管理を徹底していく必要がある」と話しています。