• 7 年前
学校の音楽室にあるお馴染みの、ベートーヴェン晩年の肖像画は、どこか気難しく頑固で近寄り難い印象です。
そしてあれこそが一般的なベートーヴェンのイメージだと思いますが、 若い頃の彼はむしろ社交的で明るく、サロンを賑わした青年音楽家でした。
『優しき愛』はそんなベートーヴェン若かりし日の、まっすぐな純愛を歌った歌曲です。
彼がウィーンに移住し、ピアノの即興演奏の名手として名を挙げていた、1795年頃にカール・フリードリヒ・ヘロゼーの詩を用いて作曲されました。


君を愛している 僕のことを君が愛しているように
昼も夜も ふたりが憂いを分かち合わない日は一日もなかった

ふたりで分かちあえば どんな憂いにも耐えられた
僕の悲しみには君が慰めとなり 君の嘆きには僕も涙した

だから神様の祝福が君にありますように
僕のいのちのよろこびである君よ

どうか神様が君を護ってくださいますように
僕たちふたりを護ってくださいますように


ヘロゼーはドレスデンや生地であるベルリンで副牧師を務めた人物です。
敬虔な啓蒙思想に基づき指導する教育者でもありました。
ベートーヴェンが選んだこの詩には、男女の愛の理想像が描かれています。
『優しき愛 - Zärtliche Liebe』が原題となっているこの歌曲ですが、 一般には『Ich liebe dich - 君を愛す』などの通称で知られています。
これは歌いだしの「Ich liebe dich, so wie du mich,」からくるもので、 「Ich liebe dich」とは英語で「I Love You」を意味しています。
またベートーヴェンの大半の歌曲には生前、作品番号がありませんでした。
そのためこの曲にはキンスキーとハルムによって編集された作品目録の番号、WoO.(Werke ohne Opuszahl 作品番号なし)が用いられています。

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