ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調 Op.55 「英雄」 第1楽章

  • 7 年前
交響曲第3番変ホ長調『英雄』作品55は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1804年に完成させた交響曲。
『英雄』のほか、イタリア語の原題に由来する『エロイカ』の名で呼ばれることも多い。
ベートーヴェンの最も重要な作品のひとつであると同時に、器楽音楽による表現の可能性を大きく広げた画期的大作である。

第1楽章は変ホ長調。4分の3拍子。 ソナタ形式(提示部反復指定あり)。交響曲第1番および第2番にあったゆっくりした序奏を欠いている。
ただし、主部の冒頭に(修飾がつくこともあるが)2回和音が響き、3度目からメロディーが流れていく、というリズムパターンは第1番から第4番まで共通しているのではないか、と指摘する学者もいる。第1主題は「ドーミドーソドミソド」とドミソの和音を分散させたものである。
モーツァルトのジングシュピール『バスティアンとバスティエンヌ』K.50(1767年の作)の序曲の主題に酷似しており、ベートーヴェンによる引用という説がある。
テーマはチェロにより提示され、全合奏で確保される。その後、経過風の部分に入り、下降動機がオーボエ、クラリネット、フルートで奏される。
第2主題は短く、ファゴットとクラリネットの和音の上にオーボエからフルート、第1ヴァイオリンへ受け継がれる。
すぐにコデッタとなり、提示部が華やかに締めくくられる。
提示部には反復記号があるが、長いので反復されずに演奏されることが多い。展開部は第1番、第2番のそれと比べても遥かに雄大で、245小節に及ぶ。展開部は第1主題を中心にさまざまな変化を示して発展する。
再現部は第1主題がさらに劇的に再現されるなど多少の変化を伴うが、ほぼ提示部の通りに進行する。143小節に及ぶ長大なコーダは、ベートーヴェン自身のそれ以前の作品と比較しても、格段に大規模であり、第2の展開部とも言うべき充実内容の濃いものである。(最後のトランペットの音域の問題については下を参照)、最後に最高音域に達した第1ヴァイオリンがなおも半音階をトレモロで上って行き、力強く締めくくられる。半ば標題的な楽想の表現のために不協和音を巧みに使うという個所が、複数の要所に置かれているという意味でも画期的な楽章である。
412小節から第1ホルンがE♭管からF管へ持ち替えて主題を演奏していることもこの曲の特徴の一つでもあるが、そのため前後に(前41小節、後89小節)長い休符があることから、管の差し替えに要する時間を確保しているのではないかと考えられる。