相場の訓言「悪材料の出尽しは買い」・・・大橋直久

  • 4 年前
株式相場・投資の訓言・格言「悪材料の出尽しは買い」

悪い噂が出て下がり続けている中、新聞記事で公になった時、もうそれ以上の悪材料はないということで上昇に転じることがよくある。

今期の決算がまた赤字でも来期の黒字転換の見透しが立てば株価が底打ちとなることがよくある。

大橋直久


■■■ 参考になりそうな過去の相場・金融ニュース ■■■


TCFフィナンシャルコーポ(2003年)

TCFフィナンシャルコーポはミネソタに本社を置く中小銀行。規模からするとわが国の第二地銀程度である。この銀行の現在のROEは二二・七%、過去五年間に収益を八・三%の成長率で向上させ続けている優良銀行である。

TCFの経営方針は“最強のコンビニバンクを創る”というものだ。そのために、顧客にもっとも便利なスーパーマーケット内に支店を置きまくるのが戦略の柱である。その実行度のスケールは大きく、全三八〇店舗のうち二三〇店舗がスーパーマーケット内のインストアブランチである。小銀行でありながら、スーパーマーケット支店の設置数については全米四位の栄冠に輝いており、ジュエルオスコー、クラブフードなどの流通大手と提携関係にある。また、この銀行は年中無休開店のスーパーマーケット店舗を全米でいち早く導入した銀行であり、まさにコンビニバンクの追求に猛進している。

コンビニバンクの対象顧客は中小零細企業、および中低所得者層個人。コンビニなんだから、日常取引の決済用口座は手数料ゼロ(米銀は手数料がかかるのが普通)で新規口座を徹底的に集めまくる。そのうえで、お手軽な金融商品をコンビニよろしく品ぞろえして、ともすれば金融弱者になりがちな顧客層に最高に便利な銀行サービスを提供している。

商品範囲は手広く、年金・保険、投資信託、住宅ローン、個人向けローン、デビットカード、オンラインバンキングなどの定番メニューに加えて、株式売買取り次ぎ(ディスカウントブローキング)、中小企業向けハイテク機器リース、中小企業向け運搬機器のリース、401kプログラム提供、中小零細企業オーナー向けのビジネスホームローンなど手広い。これらの商品提供のため、グループ傘下に幾多の専門子会社を抱える。

TCFは、脇目も振らずにコンビニバンク構築に邁進し、特化した顧客にターゲットをフォーカス。約六〇〇〇人の行員と地域に張り巡らせた三八〇店の店舗網を最大限に活用し、優秀な経営成果を上げている。中堅・中小銀行の第二の優位性がTCFに見て取れる。すなわち、事業領域をいたずらに拡大して勢力分散することなく、決めたターゲットにフォーカスして、そこでは、圧倒的に優秀なカテゴリーキラーとして大手と戦うのである。

またTCFは、この改革をなんと三~四年という極めて短いタイムスパンで成果の刈り取れるところまで実現した。ここに、先に述べた中堅・中小銀行の第一の優位性、すなわち機動性・実行力の強さが凝縮されている。

異質競争こそ勝ち残りのキーワード

同質競争で戦えば、同じ地域に二つの銀行はいらない。大きければ大きいほど効率が上がるから、大きくなって勝ち残ればよい。しかし、顧客は多様な創意工夫をこらしたサービスを享受できない。大手が効率で勝負するところに、カテゴリーキラーが大きなすき間を求めて参入し、競争を誘発、さらに顧客の需要を喚起するというのが、通常のビジネス世界での競争ダイナミックスである。いわば異質競争者の登場が競争をあおり、ビジネスの質、サービスの質を向上させるのである。先述した米銀事例は、健全なビジネスの競争原理が、異質競争者に勝利をもたらしているというごくごく当たり前のビジネス現象なのである。

再編一本やりの論調にさらされている中堅・中小銀行の経営者の方々に、ぜひ“身の丈が小さければ異質の戦い方を考え実践する”というビジネス界の成功の常識を思い出していただきたい。

参考:https://oneplanet-lifestyle.jp/