東芝不適切会計問題で同時辞任 原因は「歴代3トップの確執」か

  • 9 年前
日本を代表する企業が、前代未聞の事態に揺れている。東芝は、1,500億円を超える不適切な会計処理問題を受け、21日付けで、3人の歴代社長が辞任すると発表した。そして、今回の問題の原因の1つとして指摘されるのが、「歴代トップの対立」。名門企業の信頼を失墜させた、その企業風土を探った。
東芝の田中久雄社長は「当社140年の歴史の中で、最大とも言えるブランドのイメージの毀損(きそん)があったと認識をしております」と述べた。
深々と頭を下げた、東芝の田中社長。
不適切な会計問題は、田中社長、西田厚聡(あつとし)相談役、佐々木 則夫副会長の歴代3社長が同時に辞任する、異常事態となった。
第3者委員会の報告書では、3人が社長を引き継いできた2008年度以降、利益の水増し額の累計が、1,518億円にのぼると指摘。
3人に、組織的な関与があったと認定された。
田中社長は「直接的な指示をしたという認識は、ございません」と述べた。
日本を代表する総合電機メーカーは、なぜ狂い始めたのか。
原因の1つとみられているのは、歴代トップたちの人間関係だった。
笑顔でお互いの手を取り合う、歴代社長3人。
2年前に、田中氏が社長就任を発表した時の1コマ。
しかし、この晴れの場で、西田氏と佐々木氏は、お互いを公然と批判し、周囲を驚かせた。
西田氏は、原子力畑一筋だった佐々木氏に対し、「1つの事業しかやってこなかった人が、東芝全体を見られるのか」と話していた。
これに対して、佐々木氏も「業績を回復し、成長軌道に乗せる役割は果たした。ちゃんと数字を出しており、文句を言われる筋合いはない」と反論していた。
東芝の歴代社長を取材してきた、経済ジャーナリストの片山 修氏は「リストラよりも、成長、プレッシャーを佐々木さんにかけたと思う。(当時の佐々木社長は)ある時から、重要な経営の決断も、(当時)会長の西田さんに報告しなくなったと聞いています」と話した。
今回の利益水増しの原因と指摘される、「チャレンジ」と呼ばれる過大な達成目標。
西田氏は、社長当時の2008年、パソコン部門に対し、50億円の営業利益の上積みを「チャレンジ」として求めたとされている。
西田氏に反発していた佐々木氏も、社長だった2012年9月、中間決算直前に、パソコン部門に対し、3日で120億円の営業利益の確保を強く求めたとされている。
指示に従わなければ、「全くだめ、やり直し」と言われた。
そして、田中氏を社長に抜てきしたのは、当時の佐々木社長ではなく、西田会長。
片山氏は「本来、社長が後継者を指名すべきところを、会長の西田さんが、田中さんを指名するという、おかしな現象があるわけですし」と話した。
権力の構図が変わりながらも、チャレンジだけが継承されていた。
西田氏は21日朝、「(ご自身にも責任があると、報告書では言及しているが?)報告書は、これから会社に行って読みますから。(上積みを強く要求したということだが?)そんなことはないですけど」と話した。
会社で報告書を読んだ西田氏は、何を思ったのか。
帰宅した西田氏に、再び尋ねると、「(受け止めだけ?)受け止めてもしょうがないですよ。(西田さんのお名前も報告書にたくさん出ていたが?)広報室を通してください」と話した。
片山氏は「確かに佐々木さんの時代は、佐々木さんが西田さんに対抗しましたけど、西田さんの10年間の支配が、結果として、きょうの事態を招いたという見方さえできると思います」と話した。

東芝の株価の動きは、4月に問題が発覚した直後には、わずか1日で25円の下落となった。
そして、5月8日に決算公表の延期を発表すると、一気に80円の大幅な下落を見せている。
さらに、7月に入り、利益の水増し額が、1,500億円規模になるということがわかると、当初、500円を超えていた株価が、ついに400円を切る形となる。
問題発覚前と、21日を比べてみると、株価はおよそ22%下落したことになっていて、市場で失った信頼の大きさというのを物語っている。

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