• 10 年前
世界で注目されている認知症ケア、ユマニチュード。徹底して人間らしく接するケア。「人間は他の人間と絆を築くことで人間になる」という哲学で、認知症の介護の技法にした。
<「絆結ぶことで人間になる」 認知症ケア「ユマニチュード」 >
 2014年8月20日 東京新聞
 他の人間と絆を結ぶことで人間になる-。その特性を、介護する人とされる人のいい関係を築くために活用しようという認知症ケアの技術「ユマニチュード」が注目されている。
 ユマニチュードはフランスで、イヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんが三十五年にわたり開発してきたケアの技法。体育学専門の二人 は、病院や介護の現場で人間の動きを観察・分析し、約百五十のスキルとしてまとめた。ケアする人とされる人双方に喜びをもたらし、ケアの効果も上がると評 判になり、欧州各地やカナダに普及のための研究所がある。
 日本へは、臨床医で国立病院機構東京医療センター・総合内科医長の本田美和子さんが紹介。二〇一一年秋ごろから研修を積み、このほど三人の共著「ユマニチュード入門」(医学書院)を出版(DVDも同時発売)。イラストや日本での実践例も交え丁寧に解説している。
 根底にあるのは「人間は他の人間と絆を築くことで人間になる」という哲学。ジネストさんは言う。
 「私たちの仕事は、人間関係の再構築。胎内から生まれるのが『第一の誕生』なら、羊などのほ乳類は親になめられて仲間と認識する社会的な『第二の 誕生』がある。それが羊チュード。人間の赤ちゃんは人間に存在を認められて人間になる。それがユマニチュード(人間らしくある状況)。だが、高齢になり認 知が進むと孤立する。そこで改めて絆を結べば『第三の誕生』を迎えられる」
 ユマニチュードは「見つめる」「話す」「触れる」「立つ」ことの援助、の四つを柱とし、それぞれ「正面から近づいて視線をつかみに行く」「アイコ ンタクトが成立したら、二秒以内に話しかける」「実施しているケアの内容を実況中継する」、「飛行機の着陸のように触れ、離陸のように離す」など具体的に 示す。
 「患者は自分が物体とみなされると、攻撃的になって存在を維持しようとする。またはあきらめて殻に閉じこもる。一方、看護者や介護者は仕事をまっ とうしようとたたかう。皆、ベストを尽くしている。どうしていいのか分からないだけ。ユマニチュードは性格や心の問題ではない。伝達が可能な技術です」と ジネストさんは強調。信頼関係が成立すれば、患者はケアに協力的になり、立って歩くようにもなると言う。
 本田さんは、「実践で、言葉の違いや外国人との接触に患者が抵抗するのではと心配したが、まったく問題なかった」と言う。日本人看護師のフランス での実習も同様で「視線や手の感触、言葉のトーンで伝わるものは大きい」と確信。研究所の日本支部設立と研修開始の準備を進めている。

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