ウルリッヒ・ベック『リスク社会を生き抜く(4)』

  • 4 年前
今回の議論の冒頭でも、ベックは「それ故、人は近代とは何であるか自ら問わなくてはならないでしょう」、「それは、何が近代を引付けるかという点であり、本質的に発展の認知であり、決定を可能にするものであり、宿命的にするものではありません」と、リスク社会を生み出した近代を問うている。
そこには危機を生み出した近代を、解体し、再構築するというポストモダンの概念では対処できず、あくまでも近代を内省し、問い直すことで解決して行こうというリスク社会への強い思いが感じられる。
それ故にベックは、前回述べたように福島原発事故直後のインタビューで、「私たちは、空間的、時間的、または社会的に制限することができない新しいタイプの危険に取り組んでいます。その発生確率は非常に低いとしても、どのような状況でも発生してはなりません」と断言しているのである。
しかしベックはあくまでもポジティブであり、エネルギー転換を示唆して、「リスクは別の現代への新しい道の展望も提供します」と述べている。
そのようなベックの姿勢は、今回の後半の議論でも見られ、NZZのジャーナリストが過去の大恐慌を踏まえて、現在の金融危機をネガティブに問い正すのに対し、「まさにヨーロッパとドイツでは、同時にそれが最初の議論に戻り、産業化の勝利行進基づいた温和な状況で副作用が世界中に引き起されています。それに私たちは最早いかなる解答もありません。しかしそれこそが注目すべきパラドックスです」と、ネガティブな副作用こそ未来を切り開く鍵であると、果敢に立ち向かうベックの真骨頂を感ぜずにはいられないか。
尚今回の私のブログ「ドイツから学ぼう」では、リスク社会の切札としてベーシックインカムを述べているので参照ください。

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