年間約3千人が亡くなる子宮頸がん。それを予防するワクチンの定期接種が小6~高1の少女たちを対象に行われたが、その後、原因不明の激しい痛みやしびれなどを発症する例が相次いだ。ワクチンとの因果関係は不明だが、体の不調で通学できず留年を余儀なくされるなど、学校生活などに支障が出た人は135人に上る。自分の将来を悲観する少女たち。「学校に行きたい」という彼女たちの切実な思いを取材し、支援のあり方を問う。
関連映像【子宮頸がんワクチン接種後の症状】
(全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会 が公開)
https://youtu.be/BGjn1ZOnRiY
【子宮頸がんワクチン:国とメーカー2社へ集団賠償訴訟へ】
2016年3月30日 毎日新聞
◇接種した後に健康被害 女性4人が記者会見
子宮頸(けい)がんワクチンを接種した後に健康被害を訴えた17~21歳の女性4人が30日、東京都内で記者会見し、国とワクチンメーカー2社を相手に損害賠償を求める集団訴訟を起こす方針を発表した。現段階で計12人が提訴する意向という。今後同様の被害を訴える全国の女性にも参加を呼びかけ、6月以降に全国4地裁に一斉提訴する。
子宮頸がんワクチンを巡っては、販売開始の2009年12月から14年11月までに接種した約338万人のうち、医師や製薬企業から約2600人の頭痛などの健康被害報告があった。
会見に同席した弁護団は、国はワクチンの承認や定期接種などに積極的に関わった責任があり、グラクソ・スミスクライン、MSDのメーカー2社は製造物責任があるとしている。
弁護団の水口真寿美共同代表は「訴訟により国と企業の法的責任を明確にし、真の救済と再発防止を実現したい」と話した。国はワクチン接種と健康被害の因果関係を調査中だが、弁護団は「裁判を起こすのに必要な因果関係は十分に明らかになっている」と主張している。
会見した埼玉県の大学生、酒井七海さん(21)は高校1年の時にワクチンを2回接種した後、体のしびれや歩行障害などの症状が出た。「なぜ自分が被害を受けたのか。国やメーカーは裁判で問題の背景を明らかにし、同じような被害を繰り返さないようにしてほしい」と語った。
中学時代に接種後、発熱や記憶障害の症状が出るようになって入退院を繰り返した奈良県の高校2年、谷口結衣さん(17)は「普通の高校生活を送りたい。被害を理解してほしいと思って裁判に参加することにした」と話した。
国とグ社は「訴えの詳細を承知していないのでコメントを差し控えたい」、MSDは「提訴されれば法廷で証拠を提出する考えだ」としている。【古関俊樹】
◇子宮頸がんワクチン
子宮頸がんの原因、ヒトパピローマウイルスの感染を防ぐ効果があるとされるワクチン。日本では2010年度に国の助成事業になり、予防接種法の改正で13年4月、小学6年から高校1年を対象にした定期接種になった。健康被害の報告が相次いだため、国は同年6月から積極的に接種を勧めることを差し控えている。厚生労働省の研究班がワクチン接種と健康被害の因果関係を調査している。
【子宮頸がんワクチン:脳機能障害、患者8割が同じ遺伝子】
2016年3月16日 毎日新聞
子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える少女らを診療している厚生労働省研究班代表の池田修一信州大教授(脳神経内科)は16日、脳機能障害が起きている患者の8割弱で免疫システムに関わる遺伝子が同じ型だったとの分析結果をまとめた。事前に遺伝子型を調べることで、接種後の障害の出やすさの予測につなげられる可能性があるという。厚労省内で開かれた発表会で公表した。
研究班は信州大と鹿児島大で、ワクチン接種後に学習障害や過剰な睡眠などの脳機能障害が出た10代の少女らの血液を採り、遺伝子「HLA−DPB1」の型を調べた。
その結果、「0501」の型の患者が信州大で14人中10人(71%)、鹿児島大で19人中16人(84%)を占めた。「0501」は一般の日本人の集団では4割程度とされ、患者の型に偏りが見られた。
池田教授は「ワクチンの成分と症状の因果関係は分からないが、接種前に血液検査でHLAを調べることで発症を予防できる可能性がある」と話した。
研究班は今後、対象を手足の痛みなど別の症状のある患者も含めて150人に広げ、発症の仕組みなどについて研究を続ける。
子宮頸がんワクチンは2009年12月以降、小学6年から高校1年の少女を中心に約338万人が接種を受けたが、副作用報告が相次いで13年6月から接種の呼び掛けが中止されている。【斎藤広子】
免疫異常誘発の可能性
厚生労働省研究班の今回の分析は、子宮頸がんワクチンの接種を引き金に免疫機能が異常をきたし、過剰な反応が起きている可能性を示す。調査数が少なく「科学的に意味はない」(日本産科婦人科学会前理事長の小西郁生・京都大教授)との指摘もあるが、厚労省の専門家検討会が原因とみている接種時の痛みや不安に伴う「心身の反応説」とは異なる観点からの研究で、今後が注目される。
世界保健機関(WHO)は同ワクチンの安全宣言を出し、接種を事実上中断している日本の対応を批判している。名古屋市も昨年、7万人対象の調査で接種者と未接種者の間に発症差はなかったと発表しており、接種再開を求める声も強い。
ただ、患者らが訴える症状の原因は、解明の途上だ。研究班は複数のワクチンをマウスに接種する実験で、子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳だけに神経細胞を攻撃する抗体が作られたとしている。また、人種差があるHLA型に着目した研究は、国ごとに違う副作用発生率を比較するのに役立つ可能性があり、新たな知見が得られるかもしれない。
接種再開の議論をする際は、こうした原因解明の取り組みや治療法の開発の状況を考慮することが求められる。
【ことば】HLA
細胞の表面にあるたんぱく質で、体に入る異物を攻撃する目印になる。HLAを構成する遺伝子は複数あり、それぞれのHLA型は糖尿病やベーチェット病などさまざまな病気のなりやすさと関係しているとされる。研究者らが作る国際データベースによると「HLA−DPB1」の型が「0501」の人は、日本や中国、オーストラリアなどで多い一方、欧州や北米では低い傾向がある。
関連映像【子宮頸がんワクチン接種後の症状】
(全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会 が公開)
https://youtu.be/BGjn1ZOnRiY
【子宮頸がんワクチン:国とメーカー2社へ集団賠償訴訟へ】
2016年3月30日 毎日新聞
◇接種した後に健康被害 女性4人が記者会見
子宮頸(けい)がんワクチンを接種した後に健康被害を訴えた17~21歳の女性4人が30日、東京都内で記者会見し、国とワクチンメーカー2社を相手に損害賠償を求める集団訴訟を起こす方針を発表した。現段階で計12人が提訴する意向という。今後同様の被害を訴える全国の女性にも参加を呼びかけ、6月以降に全国4地裁に一斉提訴する。
子宮頸がんワクチンを巡っては、販売開始の2009年12月から14年11月までに接種した約338万人のうち、医師や製薬企業から約2600人の頭痛などの健康被害報告があった。
会見に同席した弁護団は、国はワクチンの承認や定期接種などに積極的に関わった責任があり、グラクソ・スミスクライン、MSDのメーカー2社は製造物責任があるとしている。
弁護団の水口真寿美共同代表は「訴訟により国と企業の法的責任を明確にし、真の救済と再発防止を実現したい」と話した。国はワクチン接種と健康被害の因果関係を調査中だが、弁護団は「裁判を起こすのに必要な因果関係は十分に明らかになっている」と主張している。
会見した埼玉県の大学生、酒井七海さん(21)は高校1年の時にワクチンを2回接種した後、体のしびれや歩行障害などの症状が出た。「なぜ自分が被害を受けたのか。国やメーカーは裁判で問題の背景を明らかにし、同じような被害を繰り返さないようにしてほしい」と語った。
中学時代に接種後、発熱や記憶障害の症状が出るようになって入退院を繰り返した奈良県の高校2年、谷口結衣さん(17)は「普通の高校生活を送りたい。被害を理解してほしいと思って裁判に参加することにした」と話した。
国とグ社は「訴えの詳細を承知していないのでコメントを差し控えたい」、MSDは「提訴されれば法廷で証拠を提出する考えだ」としている。【古関俊樹】
◇子宮頸がんワクチン
子宮頸がんの原因、ヒトパピローマウイルスの感染を防ぐ効果があるとされるワクチン。日本では2010年度に国の助成事業になり、予防接種法の改正で13年4月、小学6年から高校1年を対象にした定期接種になった。健康被害の報告が相次いだため、国は同年6月から積極的に接種を勧めることを差し控えている。厚生労働省の研究班がワクチン接種と健康被害の因果関係を調査している。
【子宮頸がんワクチン:脳機能障害、患者8割が同じ遺伝子】
2016年3月16日 毎日新聞
子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える少女らを診療している厚生労働省研究班代表の池田修一信州大教授(脳神経内科)は16日、脳機能障害が起きている患者の8割弱で免疫システムに関わる遺伝子が同じ型だったとの分析結果をまとめた。事前に遺伝子型を調べることで、接種後の障害の出やすさの予測につなげられる可能性があるという。厚労省内で開かれた発表会で公表した。
研究班は信州大と鹿児島大で、ワクチン接種後に学習障害や過剰な睡眠などの脳機能障害が出た10代の少女らの血液を採り、遺伝子「HLA−DPB1」の型を調べた。
その結果、「0501」の型の患者が信州大で14人中10人(71%)、鹿児島大で19人中16人(84%)を占めた。「0501」は一般の日本人の集団では4割程度とされ、患者の型に偏りが見られた。
池田教授は「ワクチンの成分と症状の因果関係は分からないが、接種前に血液検査でHLAを調べることで発症を予防できる可能性がある」と話した。
研究班は今後、対象を手足の痛みなど別の症状のある患者も含めて150人に広げ、発症の仕組みなどについて研究を続ける。
子宮頸がんワクチンは2009年12月以降、小学6年から高校1年の少女を中心に約338万人が接種を受けたが、副作用報告が相次いで13年6月から接種の呼び掛けが中止されている。【斎藤広子】
免疫異常誘発の可能性
厚生労働省研究班の今回の分析は、子宮頸がんワクチンの接種を引き金に免疫機能が異常をきたし、過剰な反応が起きている可能性を示す。調査数が少なく「科学的に意味はない」(日本産科婦人科学会前理事長の小西郁生・京都大教授)との指摘もあるが、厚労省の専門家検討会が原因とみている接種時の痛みや不安に伴う「心身の反応説」とは異なる観点からの研究で、今後が注目される。
世界保健機関(WHO)は同ワクチンの安全宣言を出し、接種を事実上中断している日本の対応を批判している。名古屋市も昨年、7万人対象の調査で接種者と未接種者の間に発症差はなかったと発表しており、接種再開を求める声も強い。
ただ、患者らが訴える症状の原因は、解明の途上だ。研究班は複数のワクチンをマウスに接種する実験で、子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳だけに神経細胞を攻撃する抗体が作られたとしている。また、人種差があるHLA型に着目した研究は、国ごとに違う副作用発生率を比較するのに役立つ可能性があり、新たな知見が得られるかもしれない。
接種再開の議論をする際は、こうした原因解明の取り組みや治療法の開発の状況を考慮することが求められる。
【ことば】HLA
細胞の表面にあるたんぱく質で、体に入る異物を攻撃する目印になる。HLAを構成する遺伝子は複数あり、それぞれのHLA型は糖尿病やベーチェット病などさまざまな病気のなりやすさと関係しているとされる。研究者らが作る国際データベースによると「HLA−DPB1」の型が「0501」の人は、日本や中国、オーストラリアなどで多い一方、欧州や北米では低い傾向がある。
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