<歴史家ジョン・ダワーの警告>安倍政権の言う「普通の国」とは 憲法を改正することで、自ら軍隊を持ち、武器を保有し、戦闘に参加できる国を意味しています。アメリカは「普通の国」でしょうか?
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今年は戦後70年。日本の近代史研究の分野で、アメリカでも屈指の歴史家ジョン・ダワー氏にインタビューしました。
70年前、戦後の焼け跡から奇跡的な復興を遂げた日本は、その後の歴史の歩みを経て、今後どこへ向かおうとしているのか?
歴史認識、戦争責任、憲法、沖縄、半世紀以上に渡って日本を見つめ続けてきた歴史家からの警告です。
ジョン・ダワー氏、76歳。
マサチューセッツ工科大学名誉教授。
日本の近現代史研究の第一人者だ。
1999年に出版された「敗北を抱きしめて(Embracing Defeat)」において、敗戦に打ちひしがれた日本で民主主義が生き生きと根付いていく過程を記述し、ピュリッツアー賞を受賞した。2年後には日本でも翻訳本が出版された。
この種の固い内容の本としては、異例に版を重ね、これまでに上下巻合わせて24万部が出版され、ロングセラーとなっている。
ーインタビューはアメリカ・ボストンのマサチューセッツ工科大学で行われた。ー
第1章 戦後70年 戦争の美化
・今年は第二次世界大戦終結70年だが、アメリカがベトナム戦争に本格介入して50年でもある。国防総省などがベトナム戦争追悼のイベントを用意しているが、戦争を美化し愛国的な記憶としてとらえていることに危機感を抱いています。悲惨な戦争だったのに。
・日本も同じことが言える。第二次世界大戦当時の記憶とどう向き合うのかが難しい。日本でも保守派が戦争を美化しようとしている。アメリカのベトナム戦争美化と同じ。
・アメリカのベトナム戦争記念碑と、日本の靖国神社が重なって見える(自国の犠牲者しか名前が書かれていない、祀られていない、犠牲者は英雄と呼ばれている)。沖縄の慰霊碑には日本兵だけでなくアメリカ兵、中国人、韓国人の名前も刻まれている。
第2章 戦争責任 日本とドイツ
金平:記者会見で、メルケル首相はこう強調しました。
「過去に向き合うことは和解への前提条件の一つである」
それに対して安倍首相は沈黙していましたが、この二人の違いはなんなのでしょうか?
・ドイツは、戦争中の残虐行為は二度と繰り返さないと言い、国民がそれを尊重している。日本ではそれが困難。
・天皇陛下の発言は、戦争と平和について真剣に考えられているが、現在の日本政府、とりわけ自民党は全く異なる印象を受ける。
・20年前の村山談話は強烈な印象を残した、10年前の小泉総理の談話は本質的には村山談話と同じだった。河野談話も。しかし日本では、安部総理、保守派がそうした発言を後退させている。世界はそれを見て、日本には正義がないと思われてしまう。ドイツとは全く異なる。
第3章 沖縄の声を聴け
金平:先ほど沖縄についてのお話がありましたが、
日米両政府は沖縄県民の民意に反して、新基地建設を強行しようとしています。これは民主主義と言えるのでしょうか?
・沖縄の方々が草の根運動で自らの声を届けようとしていること(基地問題)を心から尊重する。日本政府とアメリカの犠牲になってきた。70年間搾取されてきた。
第4章「普通の国」の正体
ジョン・ダワー:日本の保守派が「日本を普通の国にしたい」という時、彼らの言う「普通の国」とは憲法を改正することで、自ら軍隊を持ち、自ら武器を保有し、戦闘に参加できる国を意味しています。
今日の世界で「普通の国」とは一体どのような国なのか?と、私は自問しています。
アメリカは「普通の国」でしょうか?
保守派が主張している目標は、日本が普通の国となって、海外で軍事行動を展開する際に『アメリカとより緊密に協力できる』ようにすることなのです。
一人のアメリカ人として、今日のアメリカを見た時、とりわけ9月11日の同時多発事件以降はよく使われる言葉なのですが、我々は英語で「『安全保障国家(National Security State)』になった」と言うんです。
この国はどうかしています。
「日本を普通の国に」という言葉を耳にするたびに、彼らはアメリカをモデルに話しているのだと思いますが、それは安全保障国家、監視国家を意味しています。
より秘密主義で透明性が乏しい国家を意味しているのです。
また、核兵器近代化のビジネスへと向かう国家を意味し、
さらに、アメリカ支援を意味しているのです。
1945年から今日に至る70年間の、アメリカの軍事政策を見ると、ひどい大失敗でした。
その一つがベトナム戦争です。
ベトナム戦争は本当にひどい戦争で、行う必要のない戦争でした。
・彼らはアメリカをモデルにしてるのでしょうが、アメリカは普通の国でしょうか?
・アメリカは9.11以降「安全保障国家」「監視国家」になったと言われている。これは、より秘密主義で透明性が乏しい国家、核兵器近代化へ向かう国家を意味している。
・アメリカの軍事政策は失敗してきた。ベトナム戦争、イラク戦争、その結果のISIS。これが普通の国か?
しかし、その狂った状況は、アメリカが発信源なのです。
私は日本がそうした意味での「普通の国」になることを望んではいません。
なぜならば、日本は様々な意味で素晴らしい国だからです。
日本には戦争を経験したことで学んだことを、戦争の教訓を、スポークスマンとして広く発信して欲しいのです。
日本の方々が憲法を変えたいのならば、それもできるでしょう。
憲法9条だけじゃなく、前文も変えることができるでしょう。
けれども、そこに書かれている理念は、大変に素晴らしい理想です。
私は多くの日本人がその理想を共有していると思いますし、
アメリカがとっくの昔に忘れ去ってしまった尊いものです。
日本人の多くがそれらの憲法の理想を共有しています。
それを書き換えたいというのなら、それもいいでしょうが、
憲法こそが先の第二次世界大戦から得た財産です。
日本の財産であり、日本の財産になったのです。
終章 日本の若者たちへのメッセージ
・日本は戦争の教訓をスポークスマンとして発信して欲しい。多くの国民が日本国憲法の理想を共有している。日本国憲法こそが日本の財産。
・日本には行き過ぎた愛国主義者がいるので、過去のことに真摯に向き合っていない。自虐的だなどと言って。
・戦後70年というこの機会に、私たちは「あれはひどい戦争だった」という声にもう一度耳を傾けるべきです。
「かつての日本にあった理想や希望が今ではなくなってきたのでは」と感じるときがあります。
そのことを、とても悲しく、虚しく感じます。
日本には「アメリカのミニチュア版(Little America)」になって欲しくありません。
絶対にならないで。
そうなったら最悪ですよ。
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今年は戦後70年。日本の近代史研究の分野で、アメリカでも屈指の歴史家ジョン・ダワー氏にインタビューしました。
70年前、戦後の焼け跡から奇跡的な復興を遂げた日本は、その後の歴史の歩みを経て、今後どこへ向かおうとしているのか?
歴史認識、戦争責任、憲法、沖縄、半世紀以上に渡って日本を見つめ続けてきた歴史家からの警告です。
ジョン・ダワー氏、76歳。
マサチューセッツ工科大学名誉教授。
日本の近現代史研究の第一人者だ。
1999年に出版された「敗北を抱きしめて(Embracing Defeat)」において、敗戦に打ちひしがれた日本で民主主義が生き生きと根付いていく過程を記述し、ピュリッツアー賞を受賞した。2年後には日本でも翻訳本が出版された。
この種の固い内容の本としては、異例に版を重ね、これまでに上下巻合わせて24万部が出版され、ロングセラーとなっている。
ーインタビューはアメリカ・ボストンのマサチューセッツ工科大学で行われた。ー
第1章 戦後70年 戦争の美化
・今年は第二次世界大戦終結70年だが、アメリカがベトナム戦争に本格介入して50年でもある。国防総省などがベトナム戦争追悼のイベントを用意しているが、戦争を美化し愛国的な記憶としてとらえていることに危機感を抱いています。悲惨な戦争だったのに。
・日本も同じことが言える。第二次世界大戦当時の記憶とどう向き合うのかが難しい。日本でも保守派が戦争を美化しようとしている。アメリカのベトナム戦争美化と同じ。
・アメリカのベトナム戦争記念碑と、日本の靖国神社が重なって見える(自国の犠牲者しか名前が書かれていない、祀られていない、犠牲者は英雄と呼ばれている)。沖縄の慰霊碑には日本兵だけでなくアメリカ兵、中国人、韓国人の名前も刻まれている。
第2章 戦争責任 日本とドイツ
金平:記者会見で、メルケル首相はこう強調しました。
「過去に向き合うことは和解への前提条件の一つである」
それに対して安倍首相は沈黙していましたが、この二人の違いはなんなのでしょうか?
・ドイツは、戦争中の残虐行為は二度と繰り返さないと言い、国民がそれを尊重している。日本ではそれが困難。
・天皇陛下の発言は、戦争と平和について真剣に考えられているが、現在の日本政府、とりわけ自民党は全く異なる印象を受ける。
・20年前の村山談話は強烈な印象を残した、10年前の小泉総理の談話は本質的には村山談話と同じだった。河野談話も。しかし日本では、安部総理、保守派がそうした発言を後退させている。世界はそれを見て、日本には正義がないと思われてしまう。ドイツとは全く異なる。
第3章 沖縄の声を聴け
金平:先ほど沖縄についてのお話がありましたが、
日米両政府は沖縄県民の民意に反して、新基地建設を強行しようとしています。これは民主主義と言えるのでしょうか?
・沖縄の方々が草の根運動で自らの声を届けようとしていること(基地問題)を心から尊重する。日本政府とアメリカの犠牲になってきた。70年間搾取されてきた。
第4章「普通の国」の正体
ジョン・ダワー:日本の保守派が「日本を普通の国にしたい」という時、彼らの言う「普通の国」とは憲法を改正することで、自ら軍隊を持ち、自ら武器を保有し、戦闘に参加できる国を意味しています。
今日の世界で「普通の国」とは一体どのような国なのか?と、私は自問しています。
アメリカは「普通の国」でしょうか?
保守派が主張している目標は、日本が普通の国となって、海外で軍事行動を展開する際に『アメリカとより緊密に協力できる』ようにすることなのです。
一人のアメリカ人として、今日のアメリカを見た時、とりわけ9月11日の同時多発事件以降はよく使われる言葉なのですが、我々は英語で「『安全保障国家(National Security State)』になった」と言うんです。
この国はどうかしています。
「日本を普通の国に」という言葉を耳にするたびに、彼らはアメリカをモデルに話しているのだと思いますが、それは安全保障国家、監視国家を意味しています。
より秘密主義で透明性が乏しい国家を意味しているのです。
また、核兵器近代化のビジネスへと向かう国家を意味し、
さらに、アメリカ支援を意味しているのです。
1945年から今日に至る70年間の、アメリカの軍事政策を見ると、ひどい大失敗でした。
その一つがベトナム戦争です。
ベトナム戦争は本当にひどい戦争で、行う必要のない戦争でした。
・彼らはアメリカをモデルにしてるのでしょうが、アメリカは普通の国でしょうか?
・アメリカは9.11以降「安全保障国家」「監視国家」になったと言われている。これは、より秘密主義で透明性が乏しい国家、核兵器近代化へ向かう国家を意味している。
・アメリカの軍事政策は失敗してきた。ベトナム戦争、イラク戦争、その結果のISIS。これが普通の国か?
しかし、その狂った状況は、アメリカが発信源なのです。
私は日本がそうした意味での「普通の国」になることを望んではいません。
なぜならば、日本は様々な意味で素晴らしい国だからです。
日本には戦争を経験したことで学んだことを、戦争の教訓を、スポークスマンとして広く発信して欲しいのです。
日本の方々が憲法を変えたいのならば、それもできるでしょう。
憲法9条だけじゃなく、前文も変えることができるでしょう。
けれども、そこに書かれている理念は、大変に素晴らしい理想です。
私は多くの日本人がその理想を共有していると思いますし、
アメリカがとっくの昔に忘れ去ってしまった尊いものです。
日本人の多くがそれらの憲法の理想を共有しています。
それを書き換えたいというのなら、それもいいでしょうが、
憲法こそが先の第二次世界大戦から得た財産です。
日本の財産であり、日本の財産になったのです。
終章 日本の若者たちへのメッセージ
・日本は戦争の教訓をスポークスマンとして発信して欲しい。多くの国民が日本国憲法の理想を共有している。日本国憲法こそが日本の財産。
・日本には行き過ぎた愛国主義者がいるので、過去のことに真摯に向き合っていない。自虐的だなどと言って。
・戦後70年というこの機会に、私たちは「あれはひどい戦争だった」という声にもう一度耳を傾けるべきです。
「かつての日本にあった理想や希望が今ではなくなってきたのでは」と感じるときがあります。
そのことを、とても悲しく、虚しく感じます。
日本には「アメリカのミニチュア版(Little America)」になって欲しくありません。
絶対にならないで。
そうなったら最悪ですよ。
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