20131214安倍晋三内閣総理大臣記者会見「ASEAN特別首脳会議」

  • 11 年前
(記者)
 イレイン・リーズです。ロイターの者です。
 ASEANの諸国は今、経済的に繁栄をしています。日本の1960年代の経済の奇跡を今、彼らが実現していますけれども、同時に地域には現在緊張関係もあります。ASEANの諸国の間、そして日本の政府においては、経済のために使われるべき資金が国防のために使われるという懸念はないでしょうか。また、それはどの程度の懸念なのでしょうか。

(安倍総理)
 今や世界の成長センターとなったASEANがさらに発展をしていくためには、力ではなく法が支配する、自由で安全な海と空が不可欠であります。これに対し、現在、一方的な行為により東シナ海、そして南シナ海の現状を変えようとする動き、自由な飛行を基礎とする国際航空秩序に制限を加えようとする動きが見られます。この地域の緊張が高まっていくことは、誰の利益にもなりません。我々はこのような動きを強く懸念をしています。恐らく、多くのASEANの国々の首脳の皆さんもその懸念を共有していることと思います。
 本日の会議では、日本とASEANは航行の自由、上空飛行の自由、そして民間航空の安全を確保するための協力を強化していくことで合意をいたしました。日本とASEANが繁栄のパートナーであるためにも、我々は平和の安定のパートナーとして地域の平和と安定に一層貢献をしていく決意であります。

(内閣広報官)
 では次、再び日本側の記者の方。どうぞ。

(記者)
 TBSテレビの松本でございます。よろしくお願いいたします。
 アジア太平洋地域の平和と安定にとって、懸念要因の一つになっているのが北朝鮮情勢だと思いますけれども、こちらについてお伺いします。
 北朝鮮は、金正恩第一書記の後見人であった、ナンバー2でもありました張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑したと発表いたしました。これに対する総理の受けとめと、日本政府の対応をお聞かせください。
 また、日朝関係及び拉致問題への影響をどのようにお考えか、あわせてお聞かせください。

(安倍総理)
 我が国としては、今、御指摘のあった件も含めて、北朝鮮内部の動向について、関係国と緊密に連携をしながら、緊張感を持ちつつ、冷静に情勢を注視し、情報収集に努めてまいりました。
 昨日、13日も関連報道を受けまして、官房長官のもと、迅速に関係省庁を集め、状況把握を行ったところでありますが、今後も対応に万全を期していきたいと思います。
 この今回の出来事がどういう変化をもたらす可能性があるかということについても、しっかりと分析をしていきたいし、情報収集をしていきたいと、こう思っています。
 日朝関係や拉致問題に対して与える影響等について、具体的にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、我が国としては引き続き、対話と圧力という方針のもと、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて、取り組んでまいります。
 ASEANの国々からも、先ほどの会議において、朝鮮半島の平和と安定、そして拉致問題の解決を図るべく、各国が協力すべきであるとの意見が示されました。

(内閣広報官)
 再び外国のメディアの質問をお願いします。

(記者)
 ザ・ストレーツ・タイムズ、シンガポールの者(アンドレア・オン)です。
 今週初め、ストレーツ・タイムズ紙の「アジアン・オブ・ザ・イヤー」の共同受賞者として、貴総理の国内改革とASEAN地域での外交への貢献を評価し、貴総理を習近平国家主席と共に選出しました。同時にこの共同受賞は、アジアにおける安定の維持に対する貴総理と習近平国家主席の大きな責任を示しています。受賞についてのコメントをお願いします。また、今回の首脳会議で議論されたことを踏まえて、日中関係は来年改善してくでしょうか。中国との対話に向け、貴総理から最初に働きかけるでしょうか。

(安倍総理)
 「今年のアジアの顔」という栄誉ある賞をいただき、感激をいたしております。ASEANに対する私の思いと、我が国の貢献が評価されたものとこのように思いますが、日本が復活をすること、日本の経済が強い経済に戻ってくること、ジャパン・イズ・バックが歓迎されたのだとこのように思います。
 就任以来、私は地球儀を俯瞰する戦略的な外交を展開してまいりました。その中でASEANは常に特別なパートナーとして、その中心にありました。その証しに、就任以来、私は5回、ASEANへの歴訪を実現させました。1月のベトナム訪問から始まり、先月のラオスでASEAN10カ国を全て訪問し、ASEANの人々と交流をしました。全ての国で例外なく日本が地域や世界の平和と繁栄に貢献していくことへの大きな期待を感じました。
 今回の首脳会議でも各国首脳より、日本の果たすべき役割への大きな期待が表明され、ASEANとともに地域や世界の繁栄に貢献していきたいとの思いを強くしたところであります。
 日中関係については、私の対話のドアは常にオープンであります。問題があっても、関係全体に影響を及ぼさないようにコントロールしていくという戦略的互恵関係の原点に戻るべきであると思います。課題があるからこそ、首脳同士が胸襟を開いて話し合うべきなのではないでしょうか。ぜひ中国側にも同じ姿勢を取っていただきたいと思います。

(内閣広報官)
 もう一問だけ、最後、松山さん。

(記者)
 フジテレビの松山です。
 今回の会議で、地域の飛行の安全や航行の自由について確認があったということなんですが、一方で、中国が設定している防空識別圏に対して民間航空の飛行プランの提出に関して各国の対応が分かれています。日本は民間航空の飛行計画の提出をあえて行わなくてもいいと自制を呼びかけていますけれども、アメリカや韓国などはそれを容認する姿勢を示しています。
 総理として、今後、アメリカ、韓国、またその他の国に対して民間航空の飛行計画提出についての対応についても、日本と同調して同じような対応を取るように求めていくお考えはあるのでしょうか。

(安倍総理)
 我が国としては、今回、中国が設定した東シナ海防空識別区は、国際法上の一般原則である公海上空における飛行の自由を不当に侵害するものであると考えております。中国側に対し、このような一般原則を不当に侵害する一切の措置の撤回を求めています。我が国の民間航空機にかかる対応について、我が国としては、これまでのルールどおりの運用を行っていくとの政府の方針を変更する考えはありません。
 いずれにせよ、民間航空機の安全が確保されるべきことは当然のことであります。米国政府は、中国による防空識別区の設定を深く懸念をし、当該空域における運航に関する中国による要求を受け入れないとの立場を明確にしています。また、韓国も今回の措置に関し、強い遺憾の意を表明をしています。今後とも政府としては、関係国とよく連携をしながら、引き続き中国側に対して公海上空の飛行の自由を妨げるような一切の措置の撤回を求めていく考えであります。

(内閣広報官)
 以上で終了したいと思います。
 ありがとうございました。